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HVAFの特徴

HVAFとは

HVAFとは

HVAF(High Velocity Air Fuel)とは、炭化水素系のガスもしくは液体と圧縮空気を燃料としてチャンバー内で燃焼させ、発生した高温高圧の ガス流れに粉末を投入、粒子を加速加熱させ対象材に衝突堆積させて皮膜を形成する溶射法です。フレーム溶射やプラズマ溶射と比較すると高密着力・材料変質の少なさが 主な特徴です。


HVAFのメリット

燃焼温度が低いので、耐摩耗性を主目的としたサーメット(WC系)材料を溶射するのであれば、 HVOFでは通常発生するW2Cなどの副生成物が発生しません。金属材料なら、燃焼温度が低いので粒子の酸化や変質をできるだけ抑えた皮膜を作製できます。


HVAFとHVOFの比較

圧縮空気を使用することにより、HVAFはHVOFよりも燃焼温度が500〜1000K程低く1600〜2000K辺りとなります。 それ故に、材料の融点以上に不必要に加熱することを抑制できるので、材料の変質を少なくすることが可能となります。 改良を加えた結果、ガス温度は900Kまで低下可能となっています。

当社の機材について

HVAFの機材画像

<HVAF>
1.高速フレーム溶射法(HVOF, HVAF)
高速フレーム溶射法とは、炭化水素系のガス・液体を燃料とするフレーム溶射法の1つです。 1980年代前半にJ. A. Browningによって開発されました。
高圧の酸素もしくは圧縮空気が燃料である炭化水素系のガス・液体とともに燃焼室に送られ、高圧ガス中に材料が投入されます。


フレーム溶射法とは燃焼室圧力が高圧である点が大きく異なります。HVAFのガス速度ガン出口直後から、HVOFのガス速度はCDノズル(ラバルノズル)通過直後に超音速となります。 溶融もしくは半溶融状態で基材に超音速で衝突して皮膜を形成します。
プラズマ溶射やワイヤー溶射と比較すると、比較的低温度で粒子速度が非常に速いため、緻密で密着力に優れた皮膜を作製できます。 従来のプラズマ溶射では良好な皮膜作製が困難でしたが、高速フレーム溶射の登場普及により、サーメット溶射皮膜の性能が大幅に向上しました。


2.HVOFとHVAF
一般的には高速フレーム溶射はHVOF(high velocity oxygen fuel)として認知されており、酸化剤として高圧酸素を用います。 HVAFは、high velocity air fuelの略称であり、酸素ではなく圧縮空気を酸化剤として使用します。


3.HVAFの特長
1. 圧縮空気を用いますので、酸素を使用するHVOFよりも燃焼温度が低い。最高温度は2400K程度(最新鋭のHVAFでは1800Kほど)
2. 炭化物系サーメットの溶射に適します。HVOFでは脱炭・分解により脆性相が発生します。
3. 初期投資にコンプレッサが必要となりますが、酸素を用いないので運転コストを抑えられます。
4. 1cmを超える厚膜作製も可能です。

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ラバルノズルHVAFの機材画像

<ラバルノズルHVAF>
弊社は従来型コールドスプレー(不活性ガスを使用)やウォームスプレーを保有していませんが、この技術を知っていないと、なぜ我々が装置改造を行うかが理解できないかもしれません。
2章にわたる先行技術の説明をご了承ください。


1.コールドスプレー
1980年代にロシアで開発された比較的新しい手法であり、2000年頃を境にアメリカ・ドイツなどで爆発的に研究例が増加しました。 現在では、基礎研究から実用化の研究に移行しつつあります。
概略をFig.1に示します。ヒーターで加熱された不活性ガスと原材料粉末(数μm〜50μm)は先細末広ノズルを通過すると超音速となり固相状態のまま基材に衝突します。 衝突した粒子は運動エネルギーにより塑性変形し、後続する粒子も衝突・塑性変形していくことで堆積していき、最終的に皮膜となります。 ガス温度は粒子の融点以下であるので、従来の溶射とは異なり、酸化は発生しません。コールドスプレーなど固相状態で成膜させる手法において粒子速度は非常に重要な概念です。 ある一定以上の粒子速度に達しないと、粒子は衝突してもリバウンドするためです。
国内においては高圧ガス保安法により、作動圧力が1MPa以上の装置を「高圧型」、1MPa未満を「低圧型」と分類することが多いです。


2.ウォームスプレー
NIMSの川喜多・黒田は鹿児島大学の片野田とともに世界初の溶射法を開発しました。
超音速ノズルを有する市販のHVOFに冷却(窒素)ガスを投入する混合室を超音速ノズルの前に設けた2段式HVOFです1)。 コールドスプレーと同じく固相状態で成膜させることが可能です。概略図をFig.2に示します。

長所
1.温度選択範囲が広い。冷却ガスの流量制御により、750〜1500Kまで選択可能。
2.高融点・高強度の施工に適します。
3.条件を適切に調整すれば、酸化変質は殆ど発生しません2)。


3.HVAFの課題
・一例外を除いて、市販のHVAFにはHVOFやコールドスプレーと異なり、ガスを超音速流れにする先細末広部分(CDノズル)がありません。 ガス流れは出口直後でしか超音速になりません。このことは、コールドスプレーなどのような粒子の温度エネルギーより運動エネルギーを重視して 皮膜を形成させていく手法においては著しく不利となり、緻密な皮膜を作製することは難しくなります。
・先細末広ノズルが無いHVAFの管内ガス温度は比較的高温で、銅やアルミニウムなどの金属を施工すると酸化変質が発生します。

酸化剤に酸素ではなく圧縮空気を使用する高速フレーム溶射の1つであるHVAFは1990年代まで溶射温度が他の溶射法より低いので酸化変質が比較的少ないということを、 アピールポイントして列挙することができました。しかし、材料を固相状態のまま成膜させるコールドスプレーやウォームスプレーが開発され実用化段階に入りつつあります。 Fig.3に現段階における粒子温度速度図を示します。
ご覧のとおり、中途半端な状況です。装置は空冷ですので高温化は論外です。研究トレンドの1つはガスの低温化・粒子の高速化による成膜方法です。
そこで、ウォームスプレーの領域に近づけるべく、2008年頃から装置改造に着手しており、その研究成果を説明します。


4.HVAF改良の目標並びに目的
・低コストで運転可能且つ作動ガス低温高速化を達成させる装置の開発
・その装置による原材料粉末の酸化変質を最小限に抑制した皮膜の開発
低温高速化のために、HVAFにラバルノズルを装着しました。 燃焼ガスはラバルノズルを通過することで超音速となり、温度も急激に低下しますので低温高速化が期待できます。装置外観と装置概略をFig.4に示します。
圧縮空気は燃焼室を冷却しつつ、後方から入り灯油と混合して燃焼します。 水冷バレル部分は引き抜き銅管を用いており、バレル長さの延長短縮及びがバレル内径の選択可能であるので、いろいろな条件で施工できます。 鹿児島大学の片野田教授によるガス及び銅粒子の温度速度計算をFig.5に示します3)。詳細な条件については省略します。

計算結果を立証するために、上記の溶射装置を用いて、銅皮膜を作製しました。Fig.6に示しますように、原材料粉末と変わらない色彩の銅皮膜作製に成功しました。 詳細はこちらにて説明しています。
また、銅だけでなく、チタン、酸化チタンでも皮膜の作製に成功しました。


5.まとめ
ラバルノズルと水冷ノズルを装着したことによって、ある程度の低温高速化が達成できました。 この手法であれば、ヘリウムや窒素などの工業用ガスをまったく使用しませんので、施工における大幅なコストダウンが実現可能です。
今現在、高性能・多様化(更なる低温高速化など)を目指して改良を続けております。


参考文献
1) S. Kuroda, J. Kawakita, M. Watanabe and H, Katanoda, Sci. & Technol. Adv. Mater., 9(2008)33002
2) J. Kawakita, S. Kuroda, S. Krebs and H. Katanoda, Mater. Trans., 47(2006)1631
3) 三谷栄司, 三谷興司, 片野田洋, 日本溶射協会全国講演大会講演論文集 No.89 (2009)1

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低温用HVAFの機材画像

<低温用HVAF>
コールドスプレーの主な長所は
・緻密な皮膜が形成可能
・溶融させないので酸化変質が殆ど発生しない
・圧縮残留応力により厚膜形成可能(1cm以上)


欠点としては、
・高圧型コールドスプレー装置は比較的高価であること
・窒素・ヘリウムなどの工業用ガスを大量使用(50~150m3/h)するため、コスト高となる
以上の点が挙げられます。実際の製造工程においてガスボンベの使用は現実的ではなく、液化ガスの貯蔵用タンク・蒸発器などが必要となることから、投資金額が更に必要となります。


高価格・高コスト問題を解消するため、数年前から高専・大学と共同研究を進めてきました。平成25年度補正「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」において、弊社が応募した「省エネルギー・低コストな新規コールドスプレーシステムの開発」が採択され、プロトタイプを作製しました。

灯油と酸化剤となる圧縮空気を燃焼させ、冷却流体を投入することでガス温度を700K~1050Kまでガス温度を低下させます。流れ方向に粉体を投入し、ラバルノズルを通過することで超音速に加速され、粉体を基材に衝突変形させ皮膜を形成していきます。
輝炎を発生させないために、燃焼促進用の旋回流を発生させます。燃焼室は従来の高速フレーム溶射装置より大幅に長くしており、長さも調節可能です。

初期投資にコンプレッサが必要となりますが、工業用ガスは全く使用しませんので、比較的安価・低コストであるコールドスプレー装置です。高圧コンプレッサを導入すれば、従来の高圧型と同等の圧力(~4MPa)も原理的には可能です。


今後試験結果を公開していき、3年後の市場投入を目指しています。

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<プラズマ溶射>
恐れ入ります。
ただいま工事中です。


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